
歯を削らない点だけでなく、残った歯と暮らしの条件から考える
歯を抜いたあとに隣の歯をなるべく削りたくない場合、インプラントと部分入れ歯のどちらが合うかは、残った歯や骨のようすと、治療のあとの手入れを続けられるかで決まります。どちらも両どなりの歯を大きく削らずにおぎなえますが、支えになる歯への負担や手術があるかどうか、費用のうちわけにはちがいがあります。この記事では、それぞれのしくみや残った歯への影響、治療にかかる期間、歯科用CTでたしかめたい点までをまとめ、ご自身の暮らしとお口の状態に合う方法を考えるための材料をお伝えします。
この記事の要点まとめ
- インプラントはあごの骨で支え、部分入れ歯は残った歯にバネをかけるため、まわりの歯への力のかかり方がちがいます。
- 手術があるかどうか、骨や体の条件、治療にかかる期間、費用と保険が使えるかを、検査や見積もりでたしかめます。
- 治療のあとの歯みがきや定期的な手入れ、通院や費用など暮らしの条件もふまえ、歯科医師と相談して選びます。
- 歯を削りたくない時の選択肢、インプラントと部分入れ歯で隣の歯への影響はどう違うか
- 手術・骨の条件・保険適用・通院回数の違いを表で整理する
- 治療後の管理まで続けられるか、通院と暮らしに合わせて選ぶ
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
歯を削りたくない時の選択肢、インプラントと部分入れ歯で隣の歯への影響はどう違うか

インプラントは顎の骨で独立して力を支え、部分入れ歯は残った歯に金具をかけて支えるため、隣の歯への関わり方が根本から異なります。削る量の少なさだけでなく、残っている歯にどのような力がかかるかを知っておく必要があります。
削る量だけでなく、残った歯を含むお口全体から考える
抜歯した箇所を補う治療を選ぶ際は、隣の歯を削るかどうかだけでなく、残っている歯全体のバランスを見る視点が欠かせません。当院では、できるだけご自分の歯を残せるよう、一本の歯だけでなく口腔内全体の健康を保つお手伝いができればと考えています。
過去に神経を取った歯を失った経験があるかたほど、「今ある健康な歯には手を加えたくない」とお考えになるのは自然なことです。しかし、欠損した部分を補う方法の説明だけで決めてしまうと、支えになる歯や噛み合う反対側の歯に思わぬ負担がかかることがあります。目先の削る量にとどまらず、将来にわたって周囲の歯を守れるかという視点から選択肢を比べていきましょう。
インプラントと部分入れ歯の仕組みと、支えになる歯への負担
インプラントと部分入れ歯では、噛む力をどこで受け止めるかという仕組みが違います。インプラントは顎の骨に人工歯根(歯の根の代わりになる部品)を埋め込んで固定するため、隣の歯に頼らずに独立して噛む力を支えます。
一方、部分入れ歯は取り外し式の装置で、残っている歯にバネ(クラスプと呼ばれる留め具)をかけて安定させます。当院では保険適用の入れ歯をはじめ、各種総入れ歯や部分入れ歯の作製に対応しておりますが、部分入れ歯は設計によってバネを引っかける歯の表面をわずかに整える処置が必要になることがあります。また、噛むたびにバネをかけた歯へ揺さぶるような力が加わりやすく、金具の周りに汚れが溜まりやすい点にも注意が必要です。
「削らない治療なら残った歯に負担はない」はよくある誤解
「歯を削らない方法を選べば、残った歯への負担もかからない」と思われがちですが、どの治療法にも別の形での負担や条件が伴います。削らないことと、残った歯に負担がかからないことはイコールではありません。
インプラントは隣の歯を削らずに済む反面、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科処置が必要であり、十分な骨の量や全身の健康状態が求められます。部分入れ歯は歯を削る量を抑えられるものの、バネをかける歯に噛む力の負担が集中しやすく、毎日の清掃が不十分だとむし歯や歯周病のリスクが高まります。どちらがご自身の歯を守ることにつながるかは治療の名称だけでは決まらず、残った歯や歯ぐきの状態、そして治療後の手入れによって変わってきます。
ポイント
インプラントには外科処置や骨の条件があり、部分入れ歯にはバネをかける歯への力や汚れの負担があります。「削らないか」だけでなく、治療後の管理まで含めて比べる必要があります。
どちらを選ぶか考えるために、自分のお口の状態を知る
それぞれの特ちょうをふまえて自分に合う方法を考えるには、まず今のお口の状態をくわしく調べて知ることが出発点になります。当院では、患者さまとともにお口の健康を目指せるよう、治療のご提案に加えて、ご自身のお口の環境を知っていただくための各種検査もおすすめしています。
先に「インプラントにするか、部分入れ歯にするか」を決めてしまうのではなく、隣の歯にむし歯や歯周病がないか、歯を支える骨がどのくらい残っているかを調べることが先決です。ご自身のお口の土台を知ることで、無理のない治療の選択肢が見えてきます。
手術・骨の条件・保険適用・通院回数の違いを表で整理する
治療法を選ぶ際は、お口の中の条件だけでなく、手術の有無や通院期間、家計に関わる費用の仕組みを並べて比べる必要があります。お仕事の都合やご家族の予定と照らし合わせながら確認していきましょう。
外科処置の有無と、手術後の仕事や家族の付き添いへの影響
インプラントと部分入れ歯の大きな違いの一つが、外科処置の有無と治療にかかる期間です。インプラントは麻酔をして人工歯根を埋める手術を行い、そのあとインプラントと骨がくっつくまで、しばらく待つ期間があります。手術に伴う痛みの感じ方や腫れには個人差があるため、手術当日や翌日の仕事、ご家族の通院の付き添いなどを休む必要があるかは、事前に歯科医師へ確認しておきたい点です。
また、全身の状態や生活習慣も傷の治りに関わります。血糖のコントロールが十分でないと、手術のあとの傷の治りに影響することがあるため、事前に主治医とも相談しながら整えておくことが大切です。さらに、喫煙は粘膜の血流を悪くし、傷の治りや骨を作る細胞の働きに影響して骨の治癒が遅れることがあります1。持病やお薬、喫煙習慣がある場合は、相談の段階で歯科医師へ伝えておきましょう。一方、部分入れ歯は外科処置を伴いませんが、型取りや噛み合わせの記録、装着後の調整のために複数回の通院が必要になります。
歯科用CTで何を確認するのか、相談時に聞きたいこと
インプラントを検討する際には、歯を支える骨の状態を詳しく調べる検査が行われます。当院では歯科用CTやマイクロスコープなどの各種設備を導入しており、口腔内の状態を把握する検査に活用しております。
平面のレントゲン写真だけでは分かりにくい骨の厚みや高さ、神経や血管の位置なども、歯科用CTを用いることで立体的に確認しやすくなります。もし抜歯した箇所の歯を支える骨が少ない場合、骨を補う処置(骨造成)を検討したり、全体の治療期間が延びたりすることがあります。診察の場では、次のような点を尋ねておくと見通しを立てやすくなります。
- わたしの場合、歯科用CTでどんなところをたしかめるのか
- いまの骨の量で治療ができるか、骨のようすで治療にかかる期間はどう変わるか
- となりの歯やまわりの歯ぐきに、先に治しておくところはあるか
保険適用の範囲と、見積もりで確認したい費用の内訳
費用については、公的医療保険が使える範囲と、治療後に続く支出の両面から整理しておく必要があります。部分入れ歯は保険適用のものと自由診療(保険が適用されない診療)のものがあり、使用する素材や設計によって費用が異なります。一方、インプラントは原則として自由診療となり、一般的な費用相場は1本あたりおおむね20万〜50万円程度、骨を補う処置が必要な場合は1部位あたり3万〜15万円程度が目安とされています。これらは一般的な相場であり当院の費用ではなく、実際の費用は医療機関により異なります。当院の費用は診察のうえでご案内します。
お子様の進学費用などご家庭の支出と合わせて計画を立てるには、初期費用の総額だけでなく内訳の確認が欠かせません。診断や画像検査、手術、仮歯、上部構造(人工の歯)の費用が見積もりに含まれているかを確かめましょう。あわせて、治療後の定期的なメンテナンスや、入れ歯の修理・作り替えといった続けてかかる費用がどのくらいかを、事前に歯科医院へ聞いておくと見通しを立てやすくなります。
インプラントと部分入れ歯の違いを一覧表で確かめる
ここまで触れた項目を含め、二つの治療法の特徴を一覧表にまとめました。
| 確認したい項目 | インプラント | 部分入れ歯 |
|---|---|---|
| 隣の歯を削る可能性 | 基本的になし | バネをかける歯をわずかに整えることがある |
| 支えとなる歯への負担 | 顎の骨で支えるため隣の歯に負担をかけにくい | バネをかける歯に噛む力や汚れの負担がかかる |
| 外科処置の有無 | あり(人工歯根を埋める手術が必要) | なし |
| 骨・全身の条件 | 骨の量や全身状態、喫煙などの条件が関わる | 骨の量が少なくても作製できることが多い |
| 治療期間の目安 | 数か月〜半年以上(骨との結合を待つ期間を含む) | 数週間〜数か月程度 |
| 通院回数の傾向 | 手術・経過確認・型取りなどで期間を空けて通院 | 型取りから完成、装着後の調整まで続けて通院 |
| 保険適用の範囲 | 原則として自由診療 | 保険適用と自由診療から選択可能 |
| 装着感・噛み心地 | 固定式のため違和感が少なく噛みやすい傾向 | 取り外し式のため床や金具の違和感が出ることがある |
| 毎日の手入れ | 歯ブラシや歯間ブラシで天然歯と同様に清掃 | 毎日取り外して専用ブラシと洗浄剤で清掃 |
| 治療後の管理 | 定期的なメンテナンスと噛み合わせの確認 | 歯ぐきの変化に応じた調整・修理・作り替え |
表にある期間や通う回数は、一般的な目安です。実際の期間や回数はお口のようすや設計によって変わるので、歯科医師に聞いて確かめましょう。
治療後の管理まで続けられるか、通院と暮らしに合わせて選ぶ

治療は装置が入った時点で終わりではなく、その後の手入れや定期的な確認が続きます。ご自身の生活リズムや通院のしやすさに当てはめて、無理なく続けられる方法を選んでいきましょう。
部分入れ歯は装着後の調整・修理も見込んで選ぶ
部分入れ歯を選ぶ場合は、完成した後に何度か調整が必要になることを見込んでおく必要があります。使い始めは歯ぐきに当たって痛みが出たり、噛み合わせに違和感を覚えたりすることがあり、お口に馴染むまで微調整を重ねます。また、年月とともに歯ぐきや顎の骨の形が少しずつ変化するため、ゆるみが出た際の修理や作り替えが必要になることもあります。
毎日のお手入れでは、入れ歯を取り外して洗う習慣が欠かせません。一般的な歯みがき粉には研磨剤が含まれており、入れ歯に使うと細かい傷が入って細菌が繁殖する可能性があるため、使用しないようにします2。なお、当院では院内に技工所を設けており、入れ歯の修理や調整はケースによって当日対応も可能です。ただし、破損の状態や修理の内容によっては当日中に完了しない場合もあるため、お困りの際は状態を確認したうえでご案内いたします。
治療後も残った歯とお口の変化を見ていく
インプラントと部分入れ歯のどちらを選んだ場合でも、治療後に残った歯や歯ぐき、噛み合わせの変化を定期的に確認していく必要があります。とくにインプラントは、まわりの歯ぐきとのあいだに汚れ(プラーク)がたまると炎症(インプラント周囲炎)が起き、インプラントを支える骨が少しずつ減っていくことがあります3。
こうしたトラブルを防ぎ、バネをかける歯や隣の歯を長く保つには、ご自宅での清掃と歯科医院でのプロフェッショナルケアの両立が求められます。当院では、患者さまの症状によっては歯科衛生士の担当制を採用しております。担当の歯科衛生士が毎回口腔内をチェックすることで、細かな変化に気づきやすく、日頃のお手入れに関するご要望や疑問なども伺いやすい体制を整えております。
費用と通院の希望を伝え、納得して治療を選ぶために
治療法を迷われている段階では、お口の中の疑問だけでなく、生活上の都合やご予算の希望も遠慮なくお伝えください。当院では専用のカウンセリングルームを設け、チェアーモニターやiPadを用いて症状や治療内容を丁寧にお伝えし、しっかりご納得いただいてから治療に進めるよう心がけております。
「手術のあとに仕事を休めるか心配」「進学のお金と重なるので、費用の見通しを知りたい」「家族の付き添いがあり、通える曜日がかぎられる」といったご事情も、治療の計画を立てるうえで大切な手がかりです。
冬場など車の運転をひかえたい時期も、当院はJR函館本線の野幌駅から歩いて約3分なので通いやすい場所です。お車のかた向けに専用駐車場も8台分あります。検査の結果と暮らしのご希望をすり合わせながら、無理なく通える計画を一緒に考えていきましょう。
ポイント
治療へのご不安やご予算、お仕事やご家族の予定など、暮らしのなかの都合を前もって伝えておくと、ご自身に合った無理のない治療の計画を立てやすくなります。
インプラントが向く人・部分入れ歯が向く人の目安
最後に、これまでの内容を踏まえて、それぞれの選択肢がどのようなかたに向きやすいかを整理します。
- インプラントが向きやすいかた:顎の骨や全身状態の条件が整っており、外科処置と治癒期間を受け入れられ、隣の歯に頼らない固定式の形で定期的なメンテナンスを続けられるかた
- 部分入れ歯が向きやすいかた:外科処置を避けたいかた、まずは初期費用や治療期間を抑えたいかた、毎日の取り外し清掃と装着後の調整に通うことを続けられるかた
なお、ご家庭の予定やご予算の都合から「まずは部分入れ歯を使い、将来落ち着いてからインプラントを検討したい」という考え方もあります。その場合は、後からインプラントを入れる妨げにならないよう、残った歯や顎の骨になるべく負担をかけない設計や管理について、最初の段階で歯科医師に相談しておくことをおすすめします。どちらが合っているかを一人で抱え込まず、まずは検査でご自身のお口の状態を確かめたうえで、ご希望を歯科医師へお伝えください。
よくある質問
Q. 抜歯とインプラント手術、どちらの方が痛いですか?
A. どちらが痛いかは、処置をするはんいや骨をおぎなう処置があるかで変わり、どちらも痛みは数日ほどでおさまることが多いです。処置のあいだは麻酔をするので痛みはおさえられますが、麻酔がきれたあとの痛みやはれの出かたには人によって差があります。当院では表面麻酔や電動麻酔、笑気麻酔など痛みに配慮した工夫を行っておりますので、不安な点は事前にご相談ください。
Q. インプラントが臭いのはなぜですか?
A. インプラントと上にかぶせた人工の歯の境目や、周囲の歯ぐきに汚れ(プラーク)が溜まり、細菌が増殖して炎症を起こしていることなどが原因として考えられます。また、人工の歯を固定しているネジの緩みや、接着剤の残り部分に汚れが入り込んでにおいを発することもあります。放置するとインプラントを支える骨に影響が及ぶことがあるため、においや出血に気づいた際は早めに歯科医院で確認を受けてください。
Q. 骨粗鬆症の人はインプラント治療はできますか?
A. 骨粗しょう症のお薬を飲んだり注射したりしている場合でも、お薬の種類や使っている期間、体とお口のようすをあわせて確かめて、治療ができるかを決めます。一部のお薬は、抜歯などの外科処置のあとに、あごの骨の治りに関わることがあります4。お薬は自分の判断でやめずに、お薬手帳を持って、処方した医療機関や使い始めた時期を相談のときにお伝えください。
Q. インプラントは10年、20年後どうなりますか?
A. 毎日の手入れと定期的なメンテナンスを続ければ長く使えることが多い一方で、まわりの歯ぐきの炎症(インプラント周囲炎)やかぶせ物の破損、ネジのゆるみなどで、修理や作り直しが必要になることもあります。長く使えるかは、毎日の歯みがきや歯科医院での定期的なメンテナンス、噛み合わせの変化、喫煙や歯ぎしりといった生活習慣によって大きく左右されます。インプラントのまわりの歯ぐきや骨にも炎症が起こることがあるため、入れたあとも残った歯とあわせて、定期的な確認と清掃を続けることが大切です。
参考文献
1. インプラント – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html
2. 清潔な入れ歯でなんでもおいしく食べよう! | 大垣市公式ホームページ/水の都おおがき https://www.city.ogaki.lg.jp/0000020630.html
3. インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」について日本歯周病学会が解説します! | 歯周病のことがよくわかる「ペリオブック」|日本歯周病学会監修. https://periobook.perio.jp/periodontal-knowledge/501/
4. 歯科口腔外科 | 附属病院 | 公立大学法人 福島県立医科大学. https://www.fmu.ac.jp/hospitals/hikarigaoka/sinryoka/shika.html
5. Kondo Y, Sakai K, Minakuchi H et al. Implant-supported fixed prostheses with cantilever: a systematic review and meta-analysis. International journal of implant dentistry (2024). PMID: 39570465 / DOI: 10.1186/s40729-024-00573-8
6. Bandiaky ON, Lokossou DL, Soueidan A et al. Implant-supported removable partial dentures compared to conventional dentures: A systematic review and meta-analysis of quality of life, patient satisfaction, and biomechanical complications. Clinical and experimental dental research (2022). PMID: 35014207 / DOI: 10.1002/cre2.521
7. 糖尿病とがん、2つの治療をされる方へ | 糖尿病情報センター https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/070/080/01.html
1998年 札幌市北区屯田に石川歯科医院を開設し院長就任
2003年10月 野幌インプラントセンター所長
2005年9月 国際口腔インプラント専門医学会認定医
2006年12月 国際審美学会認定医
ICOI(国際口腔インプラント専門医学会)認定医
ISOI(国際口腔インプラント学会)指導医
国際審美学会認定医
日本口腔外科学会
日本口腔インプラント学会
日本成人矯正歯科学会
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